脂質異常症

脂質異常症について

「脂質」は血液を流れるコレステロールや中性脂肪などの脂肪分のことです。

脂質異常症これらの血液に溶けている脂肪分の代謝に異常がある状態が脂質異常症となりますが、以前は高脂血症と呼ばれていました(2007年以降、脂質異常症となっています。)
脂質異常症は高LDL-C血症(悪玉コレステロールが高い状態)、低HDL-C血症(善玉コレステロールが低い状態)、高TG血症(中性脂肪が高い状態)に分けられます。これらの脂質代謝の異常が起こると、心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化によって起こる病気を引き起こします。(脂質異常症の中でも高LDL-C血症は特に動脈硬化のリスクと言われています。)

動脈硬化を起こす病気は糖尿病、高血圧、喫煙なども危険因子になりますが、脂質異常症は危険因子の中でも最も重要なリスク因子であることが、さまざまな実験や研究で証明されています。心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患は一度発病すると後遺症で日常生活に支障をきたすとともに、総死亡の約24%を占める重篤な病気なので、病気にならないためには予防が重要となります。

脂質異常症は長年の蓄積により動脈硬化を進行させますが、早期に介入することで心筋梗塞や脳梗塞の発症予防をすることができます。また適切な治療により、動脈硬化自体の改善も期待できます。脂質異常症は指摘された時は症状の無いことが多いですが、放置することで動脈硬化が進行し、やがて生命を脅かす状態になる危険性があります。したがって、脂質異常症があるとわかった時は動脈硬化性疾患を将来発症させないために、早期からの介入、治療が重要と考えられます。

脂質異常症の治療は主に、食事や運動などの生活習慣を改善させることと、薬物療法に分けられます。食事で気をつける事は、食物繊維を取る事、糖質を取り過ぎない事、油はマーガリン等の人工油は控え、オリーブ油等を摂ることです。運動は有酸素運動が良いでしょう。薬物療法ではスタチンと呼ばれるコレステロールの合成を抑える薬や腸からのコレステロールの吸収を阻害する薬などが主に使用されます。

※コレステロールが高い方がむしろ長生きするというような話題が取り上げられますが、これは事実ではありません。例えばしらない間に癌になっていたり、肝臓が悪かったりすると、コレステロールが低くなります。しかしこれらの病気があれば、寿命が短くなる可能性があります。つまり病気があるからコレステロールが下がっているわけで、コレステロールが高いから健康で長生きであることにはなりません。逆にコレステロールが下がりすぎている場合は癌や肝臓の病気などコレステロールが低くなる病気に注意する必要があります。

また、善玉コレステロール(HDL-C)は高いほうが動脈硬化の予防に良いというニュースを耳にしますが、これも必ずしもそうとは限りません。高HDL-C血症でも動脈硬化が進行する場合がある事が分かっています。詳細は省かせて頂きますが、HDL-Cはその量よりも質が重要であると現在では考えられています。