アレルギー性鼻炎(花粉症)

アレルギー性鼻炎について

アレルギー性鼻炎は鼻の粘膜に起こるアレルギーの病気で、繰り返すくしゃみ、鼻詰まり、鼻汁を特徴とし、一般的には花粉症という病名でよく知られている病気です。花粉症は季節性アレルギー性鼻炎で、春先にスギやヒノキの花粉を吸いこむことで発症することが有名ですが、それ以外でも夏から秋にかけてイネ科の植物(ハルガヤ、カモガヤ)、キク科の植物(ヨモギやブタクサ)等で起こる花粉症もあります。また季節毎ではなく、通年性に起こるアレルギー性鼻炎もあり、その代表例はハウスダストやダニ等の吸い込みで起こるアレルギー性鼻炎です。その他、カビを吸い込んだりしても起こることが知られています。

アレルギー性鼻炎は今や国民病とされ、その有病率は20歳台~40歳台に多く、40%だと言われていますし、近年では発症の低年齢化(小児期での発病)も言われています。
診断は症状や鼻汁中の好酸球の有無、血液検査でアレルギーの検査を参考に行います。(アレルギーでない鼻炎の代表例が血管運動性鼻炎(自律神経の異常)があります。)

治療法は主に、内服の抗アレルギー剤や点鼻のステロイドです。同時に大切なことは、対象のアレルギーを確定させ、なるべくアレルゲンを除去、回避(マスクをして花粉を吸いこまない、室内を清潔にしダニの繁殖を防ぐ、ペットの飼育を控える等)する行動をとる事です。予防、内服、点鼻等で改善しない、重症のアレルギー性鼻炎では、耳鼻科で手術をして頂く事もあります。
しかしながら、上記の治療方法はあくまで対症療法であり、根治療法ではありません。対症療法では症状を抑えるために、薬を使用しないといけません。しかし根治療法ではある一定期間治療をすれば、その後は何も治療しないでも、完全にアレルギー性鼻炎をコントロールすることができます。その根治療法として近年注目されているのが、アレルギー免疫療法(以下、舌下免疫療法)です。

舌下免疫療法とはアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量、長期間にわたり投与することで、アレルギー反応を起こしにくくする免疫寛容の状態を作り出す、減感作療法のひとつです。舌下免疫療法はアレルゲンのエキスを自分で服用するため、自宅で手軽にでき、副作用が少ないのが特徴です。 現在のところ、国内ではスギ花粉症と、ダニアレルギーによる鼻炎に対してエキスが認可され、治療が実用化されています

具体的な治療方法として、1日1回舌の下にアレルギーの原因物質のエキスを投与し、口腔内の血管から体内に吸収させます。徐々に体を慣らしていき、最終的には花粉やダニを吸い込んでも鼻炎症状が起こらないよう、アレルギー反応を起こしにくい体質を作り出す方法です。投与するエキスの濃度が一定まで上がれば、月1回の通院で治療が可能(自宅での舌下投与は毎日必要)ですが、アレルギー反応を起こさない程度の体質になるまでは3~5年の治療継続期間が必要とされています。根気がいる治療法になりますが、完遂できた患者さんでは、約70~80%の方が、アレルギー性鼻炎を治癒できたという報告もあります。またこの治療方法の良いところは、舌下免疫療法をすることで、アレルギー性鼻炎だけではなく、その他のアレルギー疾患(気管支喘息やアトピー性皮膚炎)も改善される可能性があることです。特に低年齢でアレルギーを発症した患者さんでは、舌下免疫療法を受けることの恩恵が大きいと言われています。

ただし、良い側面ばかりではなく、リスク(副作用)も多少はある事が分かっています。スギ花粉やダニといった物質にアレルギーをお持ちの患者さんに微量のアレルゲンを投与することで治療を行いますので、当然のことながらアレルギー反応が起きる可能性があります(最重症ではアナフィラキシーショックとよばれる救急搬送されるような強いアレルギー反応を生じる可能性があります)。ただし、これまでの報告では、舌下免疫療法にともなう重篤な副反応はきわめて稀であり、安全な治療法とされています。(舌下免疫療法によるアナフィラキシーショックは投与100,000,000回に1例程度との報告があり、日本では現時点でアナフィラキシーショックの報告はありません。)
ごく軽度の副作用も含めて、下記のような報告があります。

  • ① 腹部症状(嘔吐、腹痛、下痢など)
  • ② 喉や口腔内・口唇のかゆみ、腫れ、違和感
  • ③ 蕁麻疹
  • ④ 喘息発作
  • ⑤ その他(耳のかゆみ、くしゃみ、鼻みず、鼻詰まり、目のかゆみなど)

上記の中でも、特に多いのが、口腔内の違和感、痒み、喉の違和感等です。(エキスが直接触れる口腔内は高い確率で副反応が出現しますが、その多くが軽症で自己管理可能で、治療を必要としません。)副作用の多くは薬の増量期(治療開始1か月以内)に起こることが多いです。治療の中断や投与量の変更を必要とするような高度の副作用は、大部分が喘息発作や消化器症状です。(初回の投与は必ず院内で行い、副作用の観察のために投与後30分程度、経過観察をします)。その為、重症の喘息がある方はこの治療は行えません。その他、妊婦さんや重症の感染症やがんの患者さんも適応はないとされています。舌下投与の前後2時間は激しい運動や入浴等は禁止されているので、そのことが守れない年齢の幼児等には少しお勧めできないかもしれません。

長期間の治療が必要になりますが、長い目でみれば、アレルギーを根本的に解決する治療法として検討されるべき有望な治療法だと考えられます。

※アレルギー免疫療法に関して、興味のある方は一度、ご相談頂ければと思います。