気管支喘息

気管支喘息について

気管支喘息気管支喘息は気道(口や鼻から肺にいたるまでの空気の通り道)に慢性的な炎症を起こす病気です。慢性的な炎症の影響で気道が細くなり、結果として、特に夜間から明け方にかけて症状が出ることが多くなります。特徴的な症状としては、呼吸困難やヒューヒュー、ゼーゼーといった喘鳴を伴う呼吸をする喘息発作症状から、咳嗽(せき)だけがしつこく出るものまで程度、頻度は様々です。もともと小児喘息がある方もいらっしゃれば、成人になってからはじめて発症する方もおられます。小児喘息がある方はアトピー性皮膚炎をはじめとした、他のアレルギー疾患を併発している方が多いですが、成人になってから発症した方は、アレルギー素因をもっていない方も多くみられます。喘息は子供の病気といったイメージが強いですが、成人では特に高齢になってから発症する方も多くおられ、高齢の喘息患者さんの方が難治性である事が多いと言われています。 また特定のお薬(解熱剤や鎮痛剤)や特定の職業(ラテックスゴムや塗装業)が原因で発症する喘息もあります。

また普段は特に症状が無くても、風邪や気管支炎をきっかけに発作が出現することもあれば、色々なアレルゲンとの接触や感作で発症することもあります。特に動物(犬や猫が多いですが、最近ではウサギやハムスター、モルモット、またダニやカビ類)のアレルギーから発症することもあります。また花粉症(春先ならスギやヒノキ、秋ならイネ科やキク科植物)などのアレルギーを持っている方は喘息を発症しやすいと言われています。

色々な原因で発症する気管支喘息ですが、実は決め手となるような検査は無く、診断の難しい病気です。だからこそ患者さんの詳細な症状、経過、他のアレルギー疾患の有無、ペットの飼育有無といった診察時の問診が非常に大事となります。

気管支喘息は、むつかしくいえば『気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄や咳などの症状で特徴づけられる疾患』ですが、その原因、リスク因子は様々なのです。以下、気管支喘息のリスク因子です。

喘息のリスク因子

  • 遺伝的素因:両親が喘息だと、発症リスクは数程高くなります。
  • アトピー素因:アトピー性皮膚炎、食物(卵、牛乳など)アレルギーや花粉症など
  • 喫煙、受動喫煙
  • 大気汚染
  • 気象(気圧や冷気など)
  • 薬物(解熱鎮痛剤、湿布薬など)⇒アスピリン喘息
  • 運動(運動誘発性喘息)
  • ペット飼育(犬、猫、ラット等、それに伴うダニやハウスダスト)
  • 呼吸器感染症

ご自身では気づいていないアレルギー体質が喘息発症の引き金になっている事もあるので、診断の前に血液検査で各種アレルギー検査を調べることが重要です。

気管支喘息の治療法ですが、重症度にもよりますが、基本的には吸入ステロイドが治療の中心となります。
吸入ステロイドが無い時は、喘息をコントロールすることが難しく、喘息の発作で命を落とす方も少なくありませんでした。しかし吸入ステロイドが普及した現在では、喘息死は劇的に減っています。

また、喘息のリスクを少なくするために、予防も大切です。禁煙はもちろんのこと(喫煙は吸入ステロイドの効果を弱めます)、ハウスダストやダニ除去の為に、室内のこまめな掃除、換気は大事です。またペットが原因であれば、可能なら飼育は避けた方が良いです(少なくとも室内で飼うことは避ける)。

軽症の場合は吸入ステロイド薬だけで十分にコントロールできます。もう少し重症になってくれば、吸入ステロイドに加えて、長時間作用型の気管支拡張薬の吸入や抗アレルギー剤内服の併用を行います。それでもコントロールできない重症の喘息患者さんが10%程いると言われており、その様な場合はステロイド薬の内服や生物学的製剤の使用を検討いたします。上記治療で症状がコントロールできている場合でも、風邪や気管支炎、様々な誘因で喘息発作を起こすこともありますが、その様な場合は短時間作用型の気管支拡張薬やステロイドの短期間内服、点滴等を行います。

大事な事は、多くの気管支喘息患者さんは吸入ステロイドで症状を落ち着けることが可能なのですが、それは吸入ステロイドで気道の炎症を抑えているから、症状がでないのであって、途中でやめてしまうと、喘息の治療は悪化します。症状が落ち着いても長期にわたって吸入療法を続けることが大切なのです。

※ちなみに良く誤解される事ですが、ステロイド約は副作用が多くて、続けるのが怖いという患者さんがおられます。しかしながら、吸入や軟膏・ローション等の局所で使うステロイド剤は適切に使えば全身の副作用は極めて少なく、安全に使えます。適切に使用して、病気を治療する方が、中断するよりも多くのメリットが得られると考えられています。